2005年2月 8日

山田昌弘「希望格差社会」

「リスク化」と「二極化」という2つのキーワードをもとに、現代社会の問題について述べた本。分かりやすく読むことができる、ということは、これだけ問題が山積しているということで、怖くもある。5章の「職業の不安定化」が一番身につまされる。産業構造の転換(仕事の二極化)から非正社員の雇用につながるということで、若年労働者のフリーターが増えることになる。今はパラサイトしていれば大丈夫な人たちも、いずれはそうはいかなくなる。ただ、解決策はなかなかない。

現代社会を把握するにはいい本。講義録がベースになっていて、学生とのやり取りもいろいろあったそうだ。うちの学生に読ませたらどんな反応をするのだろうか。

2005年2月 1日

溝上慎一「現代大学生論」

('04/6/26の日記より転載)

あいもかわらず、溝上さんのすごさには驚くばかり。よくここまできっちりと調べて記述できるものだ。NHKブックスという一般書なので、かなり平易には書かれているがデータ量は半端じゃない。内容としては、80年代までの「アウトサイド・イン」(いい大学に入ることなどを目指して、その流れとして大人社会に入っていく)と、90年代以降増えてきた「インサイド・アウト」(自分探しをしながら職業社会に入っていく)の2種類の生き方ダイナミックスがあるということ、そのダイナミックスを通して大学生の生活を記述したものである。どっちの生き方でもかまわないが、現代の大学生は”生き方を迫られる”ということである。情報があふれ、不景気であり、若年雇用は抑えられ。若者にとっては希望を持ちにくい時代ともいえ、だからこそ「やりたいことをやる」生き方に流れるのかもしれない。とりあえず生きていくだけのアルバイトは見つかりますからね。

でも、やりたいことが見つけられる人はいい。問題は「インサイド・アウト」の生き方を選択し(迫られ)、でも特段やりたいことも見つからない学生だろう。「パラサイト・シングル」という言葉が以前はやったが、過保護な親も増え、とりあえずは生きてはいける社会である。ご飯が食べられない、という人の数はかなり減っているだろう。それでなんとなく暮らしていってはいつか行き詰まる。生きにくい時代ではあるが、学生には厳しい環境に身をおいて暮らしてほしい。その中から何かが見つけられると思うんですが。

大学生の生活が綿密に記述された本なので、大学関係者の方にはぜひ一読をお薦めします。