京大入試でのカンニング事件について思うこと

久しぶりの日記になりました。

ここ1週間、京大入試におけるカンニングについて、話題になりました。試験時間中に「Yahoo!知恵袋」に試験問題に関する質問が投稿された、ということです。

犯人が特定され、逮捕されるということになりました。愉快犯、組織的犯行、などいろんな推測がなされていましたが、普通の受験生でした。私も愉快犯だと思っていたので、正直驚きました。また、自殺も考えられたので、無事保護されたことにほっとしています。

いろんなメディアで報道されていますし、ネット上でもtwitterなどでさまざまな意見が出されています。私も意見を書いていたのですが、どうしても散漫になるので、まとめておこうと思います。

まず、1点目として「京大が被害届を出したのが問題だ」という意見が多く見られます。大学入試でのカンニング、ということで、被害の大きさ、範囲などを考えてのことだと思いますし、「大学の自治」と絡めてそういうことをおっしゃられている方もおられます。ただ、今回の場合、携帯電話やインターネットを使っていたので、個人を特定するためにはYahoo!や携帯電話の会社、プロバイダに問い合わせる必要があります。当然、京大が問い合わせても個人情報の関係から教えてもらえません。ですので、大学が独自に調査しても限界があったと思われます。

カンニングの対象になった4つの大学の受験者を照合すれば、という意見もありますが、捜査段階は複数人の関与も考えられたわけで、そうなると、2大学はA、2大学はBが受験していた場合、どうしようもないことになります。そういうことから考えると、警察に協力をお願いするしか無かったと思います。

逆に、大学だけで独自で調査を行い、もし犯人を特定できなかった場合、今後の大学入試の運営(京大の入試だけではなく、全ての大学入試)に大きな影響をおよぼすことになると思います。そうなると、大学側ももちろんですが、受験生側にもストレスがかかることになると思われます。

被害届の提出も今日3月3日の午前、ということで、いろいろ配慮してのことだと思います。その点について、外野がどうこう言うことはできないのでは、と思います。

2点目として、「試験監督に問題があったのではないか」という意見も見られています。もちろん、問題があったのかもしれません。ただ、京大だけが報道で注目されてしまっている印象を持っているのですが、4大学でカンニングは実行された、という事実です。早稲田、同志社、立教大、京大の4大学の試験監督に気づかれずに実行できた、ということは、そう簡単には見つけられない手法を使っているのではないか、と予想できます。4大学とも試験監督の怠慢があった、という可能性はそれほど高くないのでは、と考えてしまうのです。

私も勤務大学で試験監督を行っていますが、やはり挙動不審な学生(頻繁に姿勢を変える、キョロキョロ顔を動かす、など)についてはチェックしています。大学の授業中でも内職している学生は大体わかります。そう考えると、どうやって実行したのだろう、ということは、私にとってはものすごく不思議です。特に試験開始直後は、なにか問題あるかもしれません(例えば、乱丁、落丁など)ので、机間巡視も行うことが多いので。

今回、逮捕ということになりました。組織的犯行や愉快犯であれば逮捕はありえるのかも、と思っていました。ただ、結果として普通の受験生だったので、逮捕までするのか、という気持ちはあります。ただ、カンニングの手法については、明らかにしてほしいと思っています。今後の日本の大学入試運営をするうえで対策する必要がある、と考えるからです。そして、起訴猶予などで釈放されてほしいと願います。そして、来年、もう一度大学受験に挑戦してもらいたいです。

入試制度の問題を指摘する人も多いですが、特に国立大学の場合は、すぐに大きく変えることは不可能でしょうし、社会構造や意識も変わらないと、難しいと思います。もちろん、大学人としては、大学の教育について真摯に改善に取り組んでいかなければならないと思っています。ただ、問題が混ざったり、すり替わったりしていることも多いので、その辺はとても気になります。

今回の問題が発覚したのは、やはり「京大」だったからだとも思います。京都大学新聞社の指摘によりネット上で広がりましたが、11時半ごろの段階で通報があったということです(「ネット投稿 試験直後に京大新聞指摘 ツイッターで拡散」(朝日新聞))。これまでの3大学では明らかになってなかった(もちろん要約の問題など見つかりにくいものもありますが)わけですから。その反面、「京大」だからこそ、これだけ報道も加熱してしまったのだろう、と思います。その点については、いろいろ思いもありますが、とりあえず「京大」「東大」の影響力を改めて認識しました。もし、これが私の勤務校の京都外大で起こっていたら、試験運営の体制について非難を受けることはあるでしょうが、これほどまでに取り上げられることはなかっただろうな、と思うので。

他にもいろいろありますし、うまく表現できていない部分もありそうですが、とりあえず書きました。

大学人として願うことは、受験生に自分の力を十分に発揮してもらいたい、ということです。それをサポートすることが私たちの役割だと思うので。

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(追記) 2011/3/4 13:00

1つ書けていなかったことがありました。

現状の大学入試でも、携帯電話については電源を切ってかばんに入れるように指示していることが多いと思います。他には机の上に置いておく、封筒に入れる、などの対策をとっている大学もありますが、そもそも不正行為を考えている受験生が、その指示に従うとは思えません。また、携帯電話を2台以上もっている受験生もいるはずで、1台持っているのを確認したからOKということにもなりません。

入り口で持ち物の確認、ということはありえますが、隠し持っている場合はボディチェックを行うしかありません。人手で行うのは時間的にも(教職員が行うのであれば、技術的にも)厳しいでしょう。かといって、飛行機に搭乗するときのセキュリティゲートみたいなものを導入するのも難しいでしょう。

携帯電話の電波を妨害するジャミングを実施する、ということも話題になっていましたが、各大学で全教室にその設備を導入するのは予算として難しいでしょう。それに、今回は携帯電話と分かっていましたが、もし無線LANを使っていた場合、対処のしようがないと思います。

なので、試験監督としては、受験生を注意深く見るしかないだろう、と思います。カメラで撮影しておけば、なんて話も出たりしますが、それもまた問題がありますしね。

下記のブログなどが参考になりました。玉井克哉先生、落合洋司先生の意見に同意します。@next49さんのまとめもいろいろ考える上でとても参考になります。

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このページは、村上正行が2011年3月 3日 23:55に書いたブログ記事です。

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